紅れん石 piemontite
Ca2(Al,Mn,Fe)3O(SiO4)(Si2O7)(OH)
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厳密には斜灰れん石のAlの代わりにMn3+に富むものに相当するが,実際は紅れん石片岩中によく見られる桃色のものでもMn3+<Fe3+で,緑れん石に該当するものが多い。ただし,このような緑れん石も著量のMn3+を含むことにより濃桃色になっていることが地質学的な大きな特徴(紅れん石片岩は付加体のMnを含むチャートが広域変成作用を受けてできる)なので,便宜上「紅れん石」としている。なお,黒色不透明のブラウン鉱を伴う場合はMn3+に富み,厳密に紅れん石に該当するものが多い。

二軸性(+)2Vz=60〜90° α=1.73〜1.79程度 β=1.75〜1.81程度 γ=1.76〜1.83程度 γ-α=0.03〜0.08程度。

色・多色性紫桃〜桃赤〜橙黄色で非常に強く,特徴的。ステージを回さなくても粒子ごとに結晶方位の違いで色が違って見える。





形態/b軸方向に伸びた柱状の自形〜半自形。

へき開伸び方向に1方向に完全なへき開が見られる。
消光角/結晶の伸び方向には直消光する。b軸方向から見たへき開線に対しては30°程度斜消光する。
※ただし,結晶片岩の薄片は通常,線構造に対し平行に作製されるので,b軸方向に伸びる紅れん石のb軸方向から見える粒子はその薄片ではあまり見つからない。
伸長/b軸方向に伸び,かつb=Yなので,正の場合も負の場合もある。

双晶(1 0 0)にまれ。消光状態で認められる。

累帯構造
/Mnの多少による累帯構造があるものは平行ニコルの色でわかる場合がある。





紅れん石片岩中の紅れん石 
Pie:紅れん石,Qz:石英,Ms:白雲母,Ap:リン灰石,Hm:赤鉄鉱またはブラウン鉱

紅れん石は,ほぼ紅れん石片岩固有の造岩鉱物で,多量の石英・少量の白雲母などとともに紅れん石片岩を構成する。右画像のように肉眼的にかなり桃色が濃い紅れん石片岩でも偏光顕微鏡では上の画像のように紅れん石の割合はかなり少ないのが普通である。紅れん石は濃桃色〜黄色の多色性が極めて強く,ステージを回転させなくても粒子毎に色が違って見え,通常の造岩鉱物で他に間違える鉱物はほとんどない。
紅れん石片岩には時に副成分鉱物として少量の無色微粒状のリン灰石やスペサルティンなどを伴うこともある。黒色不透明なのは赤鉄鉱やブラウン鉱で,これらは紅れん石とともにやや酸化的な条件でできる鉱物である。

なお,この画像のような鮮やかな桃色のものもMn3+<Fe3+で,厳密には緑れん石に該当するものが多い。